誤報であった「新型コロナは空気感染」以来、新型コロナウイルス関連のネタはできる限り避けていたのですが、今回も個人的にひどいなと思う事柄があったので書き残しておきます。
まずは、新型コロナウイルスに罹患されお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りいたしますとともに、重症で入院し苦しい闘病生活を続けられている方とそのご家族の方々に対しお見舞いを申し上げます。
また、軽症・無症状でありながらPCR検査において陽性となり、誹謗中傷や風評被害など困難な状況にあわれている全ての方にエールを送りたいと思います。
さて、先日、プロ野球の阪神タイガースに所属する藤浪晋太郎投手が嗅覚の異常をきっかけにPCR検査を受け、陽性であったことが報道されました。
この記事では、藤浪投手が感染したきっかけや、いち早く自覚症状とともに公表したことの是非を問いたいわけではありません。
あるYahoo!ニュースの記事に対し「野球選手は上級国民だからPCR検査を受けられた」といったコメントを残し、その後、コメントを削除した行為について卑怯だと思ったので、記事にしました。
僕の個人的な感情が入りますので、不快な方はここまで戻るボタンを押していただければと思います。
取り消されたコメント
僕は、前回の新型コロナウイルスの記事もそうでしたが、社会的に影響力がある人が自分の主義主張に基づいて発した言葉を、「削除」というカタチでなかったことにするのが嫌いです。
そりゃぁ誰だって言い間違いや、状況や雰囲気に流されて失言したり、売り言葉に買い言葉で間違った言葉を選択することもあるでしょう。
僕も妻との会話ではいつも間違ったコメントをして、不快な思いをさせてしまうことが多々あります。
でも、社会的に影響力のある人が、自分の主義主張に合うよう煽動したあげく、その発言自体を削除する行為は卑怯だと感じました。
「これは私刑(リンチ)じゃないか!」というご批判を覚悟した上で、その報道の記事とコメントを残しておこうと思います。
スポニチアネックスの報道
まずは取り消されたコメントが載っていた報道記事です。
それは、Yahoo!ニュースに掲載されていた「阪神 コロナ感染判明 藤浪同僚2選手は伊藤隼と長坂 14日に12人で食事会」というスポニチアネックス提供の記事です。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200327-00000158-spnannex-baseheadlines.yahoo.co.jp
【2020年4月27日追記】 上のYahoo!ニュースの記事が削除されたようなので、スポニチアネックスのWebサイトにあったオリジナル記事のURLを貼っておきますね。
【追記ここまで】
この記事では、公表されていた藤浪晋太郎投手以外の同僚2選手が明らかになったことと、この3名と球団職員および外部の5名の方と計12名で食事をしたこと等が報道されています。
Yahoo!コメントでは、実名を公表し嗅覚異常も新型コロナウイルス感染の初期症状であることを周知した藤浪晋太郎投手に対する好意的なものから、こんな時に外部の人5名と会食するという自覚の無さを非難する声などもあり、賛否両論でした。
そのコメントの中に、削除されたコメントがありました。
削除されたコメントの内容
まずは、削除されたコメントがキャッシュに残っていたので、その画像をご覧いただきましょう。
そして内容を引用します。
藤波選手らの感染が早期に発見されたこと自体はよかったのですが、疑問を禁じ得ません。
なぜこの程度の症状でPCR検査を受けられたのか。巷では「体調不良が続いているのに保健所に検査を断られた」という声がいまだに渦巻いています。
野球選手は「上級国民」なので、特別扱いで検査に回されたということなのか?
検査をめぐって、「上級国民」と「その他大勢」で格差が生じているのだとすれば、今後何が起こるでしょうか。
イタリアやスペインのように人工呼吸器のキャパを感染者数が上回ると、トリアージの出番となります。「先が長い人を優先して、老い先の短い人には諦めてもらう」ということです。残酷ですがそれが「公正」です。
日本がパンデミックに陥った場合、「一般庶民の若者を見捨てて、上級国民の高齢者を助ける」ということが起こらないか?
医療関係者におかれましては、トリアージの原則の徹底をあらためて確認していただきたい。
出典:https://news.yahoo.co.jp/profile/author/shiraisatoshi/comments/(2020/03/28現在削除)
このコメントの内容自体は正直、「まぁこういう主張をする人もいるだろうな」っていう感想でした。
でも、このコメントを見た一般の方が誤解するおそれがある部分があります。その誤解する部分をオーサーという立場で書いておきながらコメントを削除することが、僕が問題視するところです。
コメントで誤解される可能性のある部分
コメントの主義主張はおいといて、僕が誤解される可能性があるだろうなと思うのが2つあります。
1つ目は
野球選手は「上級国民」なので、特別扱いで検査に回されたということなのか?
このコメントを受けて、該当記事のヤフコメやSNSなどでたびたび「上級国民」という言葉が出るようになりました。また、「野球選手=上級国民」という印象を与えます。
もう一つが「トリアージ」についてです。
イタリアやスペインのように人工呼吸器のキャパを感染者数が上回ると、トリアージの出番となります。「先が長い人を優先して、老い先の短い人には諦めてもらう」ということです。残酷ですがそれが「公正」です。
このトリアージに関する記述も大きな問題であると思います。
それぞれ僕の考えを述べます。
上級国民
おそらくコメ主の白井聡氏は、「一般庶民がなかなか受けられないPCR検査を上級国民が優先的に受けるのはおかしい」という主張がしたかったのでしょう。
僕が「上級国民」という単語を知ったのは、2019年に東京の東池袋で起きた東池袋自動車暴走死傷事故でした。
この事故では、同時期に起こった同じような交通事故では運転手が即逮捕されたのに対し、飯塚幸三容疑者が事故後半年以上も逮捕されない不思議を「上級国民だから配慮された」などの風説が、主にネット上で流れました。
つまり、「上級国民」とはしっかりと定義づけられた言葉ではなく、一般の人よりも優遇されているように見える「政治家や官僚などの権力者や富裕層」に対しての反発や揶揄として使われる言葉です。
なお、Wikipediaの上級国民の記述によると、過去にも「上級国民」という単語が出てきたそうです。
大正時代に佐々木惣一氏が『立憲非立憲』において、「限られた範囲の国民」について「上級国民と云うて置かう」とあり、「君主の任命に係る者」と同列に「上級国民の指定に係る者」が並べられている
出典:Wikipedia:「上級国民」
白井聡氏は政治学や社会思想の学者ですので、佐々木惣一氏の『立憲非立憲』についてはよくご存じだったのでしょう。
ですが、現在の一般的な「上級国民」に対する認知は「東池袋自動車暴走死傷事故」の飯塚容疑者が発端でしょう。社会に対する不平不満や不安感などを感じる一般の方が、恵まれている層に向けた攻撃的な言葉として「上級国民」の意味をつくっているように思えます。
けれど、ここで疑問が出てきます。
多くの人に夢や希望を与える野球選手は上級国民なのか?という疑問です。
藤浪晋太郎投手は上級国民なのか
野球選手は上級国民だと言われる理由の一つは、一般の人よりも多くの年俸をもらっている点でしょう。
藤浪晋太郎投手の今季(2020年)の年俸は6,300万円です。
今年4月に26歳になる若者としては、かなり高額な年俸ですが、同い年の鈴木誠也選手の年俸2億8千万円の4分の1にも満たない数字です。(ちなみに大谷翔平選手も同じ年齢ですが、こちらは700,000ドル日本円で約7,700万円と藤浪投手より少し高いくらいです)
また藤浪晋太郎投手の成績は、この4年ほど下降気味。
球は速いが、コントロールが悪く、一時イップスの症状もあったと聞きます。マスコミにたたかれ、ファンから罵声を浴びせられながらも奮闘し、もがき苦しみながらも今年にかける思いも大きかったでしょう。
注目度が高いなか、嗅覚の異常で新型コロナウイルスの症状もあることを知ってもらいたいという想いからPCR検査を受ける前に実名を公表したことについて、僕はかなり好感を持ちました。
おそらく、12名での会食の話は絶対にマスコミにたたかれ、世間からも批判を浴びることを覚悟の上での実名公表だったと思います。
そんな若者が「上級国民」なのでしょうか。
僕はイメージがわきません。
なぜ「野球選手は上級国民」という構図が生まれたのか(推測)
これは僕の推測ですが、白井聡氏が、野球というスポーツ自体にレッテルを貼っているからじゃないかと思います。
3S政策をご存じでしょうか。
3S政策(さんエスせいさく)とは、Screen(スクリーン=映画鑑賞)、Sport(スポーツ=プロスポーツ観戦)、Sex(セックス=性産業)を用いて大衆の関心を政治に向けさせないようにする愚民政策であり、そのような政策があったとの主張である。
出典:Wikipedia:「3S政策」より抜粋
愚民政策とは、娯楽で国民を堕落させ、学問や政治に関心を持たなくさせる政策のことです。
愚民政策の1つである3S政策のスポーツ部門で大いに活用されたのが「プロ野球」というわけです。
昭和のころはゴールデンタイムにプロ野球の中継を流し、時間を超過しても後の番組をカットしてでもギリギリまで放送を続けていました。おかげで仕事帰りの居酒屋では、政治の話よりもプロ野球のひいきのチームの勝った負けたの話が盛り上がります。ニュースでも重要な法案の話よりも、スポーツニュースに関心を向けます。
今でも、世の中が暗いムードだとイチロー選手に国民栄誉賞の打診をしたりしますよね。
プロ野球選手は影響力が強いので、政治利用されやすい側面があります。
そういう年俸の高さや影響力の強さなどが、「野球選手は上級国民」という構図を生んでいるのだと思います。
トリアージへの誤解を生むコメント
すみません、上級国民のところで文字数を使いすぎました。
もう一度、トリアージへの誤解を生むコメント部分を記載します。
イタリアやスペインのように人工呼吸器のキャパを感染者数が上回ると、トリアージの出番となります。「先が長い人を優先して、老い先の短い人には諦めてもらう」ということです。残酷ですがそれが「公正」です。
このトリアージに対する記述は、誤解を生みます。
トリアージとは
まず、トリアージは「先が長い人を優先して、老い先の短い人には諦めてもらう」ということではありません。
トリアージ(仏: triage[注 1][注 2])とは、患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行うこと。
出典:Wikipedia:「トリアージ」より抜粋
つまり、単純に「老人よりも若者を優先する」ということではないです。
イタリアやスペインのトリアージの基準は、医療崩壊を起こしている状況の中で、苦渋の決断で政治判断として、トリアージの優先順位の項目に年齢を入れたのだと思います。
この白井聡氏のトリアージの記述は、「イタリアやスペインが行っているトリアージではなく、一般庶民より上級国民を優先する愚かな安倍政権」という印象操作に利用したかったように見えます。
白井聡氏は、トリアージに対する考え方を十分理解したうえで使ったコメントかも知れません。ですが、予備知識がない読者は、言葉のまま「トリアージとは、老人よりも若者を優先すること」と、受け取りかねません。
非常に危険です。
オーサーのコメント削除は卑怯
最後に、白井聡氏のYahoo!コメントの削除がなぜ卑怯かを書きます。
それは白井聡氏がYahoo!のオーサーだからです。
オーサーとは、Yahoo!ニュースの「個人」という項目に記事を掲載することができる、様々なジャンルの専門家です。
なぜ、オーサーのコメントの削除が卑怯なのでしょう。
オーサーのできること
オーサーはYahoo!に記事を掲載できるほか、Yahoo!ニュースの別の記事に特別なコメントを残すことができます。
オーサーがYahoo!に記事を掲載するとき、一般の人はコメントを残すことができません。記事について評価したくてもYahoo!内では「参考になった」のボタンを押すことしかできないのです。また、オーサーの記事に対して自分の意見を述べたいのならFacebookやTwitterなど自分のメディアを使うしかないのです。
オーサーがYahoo!の記事にコメントを残す際、オーサーのコメントにはgoodもbadも押すことができません。「参考になった」のボタンを押すことしかできないのです。
また、オーサーのコメントには返信することもできません。
オーサーの記事やコメントにはYahoo!自体が編集や削除などを行わないこともうたわれています。
なぜこれだけオーサーが優遇されるのかと言えば、まず匿名ではなく実名(ペンネームの場合あり)を公表しおり、本人のFacebookやTwitterのアカウントなどを表示することで、直接意見などがいえる仕組みになっています。
これはYahoo!自体が言論を縛らないことによって、多種多様な専門家の意見を自由に載せることができるそうです。
オーサーの言論の自由を守るのは素晴らしい考えですが、オーサーの選定が少し恣意的で偏りがあるかなと思います。オーサーの選定で偏ったら、偏った言論を守ることになるなとは思いますが、これは本記事では取り上げません。
問題は、オーサーのコメントは、必ずコメント一覧のトップに表示され、誰からも返信ができないことです。
多くの人に影響を与えながらコメントを消すことができる
オーサーは多くの人に影響を与えることができます。
まず、コメントの一覧のトップに表示されることはかなりの特権です。多くの人の目に触れることができるでしょう。
そして、オーサーのコメントとして一般のコメントよりも特別扱いされますので、一般の人は専門家が専門的な知識を背景にコメントしているものと感じます。
では、オーサーのコメントに明らかな間違いや政治・思想的な偏りがあった場合はどうでしょう。オーサーのコメントに紐付けして返信ができないので、その間違いを指摘することも、反対意見を述べることもできません。
さらに、コメントを削除されると、別のメディアなどで批判したくても証拠がなくなるので批判すらできません。
これは卑怯です。
ひょっとしたら、白井聡氏は自分のコメントが間違っていたと気づき、削除したのかも知れません。であれば、Yahoo!内で改めて修正したコメントを出すなり削除した理由を記事にするなりすべきだと思います。
オーサーはYahoo!における上級国民
今回の件で感じたのは、「Yahoo!においてオーサーは上級国民だ」ということです。
野球選手は「上級国民」なので、特別扱いで検査に回されたということなのか?
このコメント流に表現すると
- オーサーは「上級国民」なので、特別扱いでコメントを優遇されたということなのか?
です。
別にオーサーが優遇されてもいいでしょう。
ただ、何も言わずにコメントを削除する行為は、
藤浪晋太郎投手がその後の12人の会食について批判されるのを覚悟の上でPCR検査を受ける前に実名公表したことを例にとり
『上級国民だからPCR検査を受けることができた野球選手は「上級国民」なので、特別扱いで検査に回されたということなのか?』
というコメントを残した方のとる行為なのか、ということです。
もちろん、白井聡氏がコメントで伝えたかったことであったり、コメントを削除したことに、どんな深謀遠慮があったかは分かりません。
でも、本件の報道記事のヤフコメやSNSでは、実際に「藤浪晋太郎投手は上級国民だから軽症でもPCR検査ができたんだ」という意見が見られます。
僕が今回の記事を書いた動機は、白井聡氏のコメントの内容はともかく、影響を与えながらその言葉を削除したこと自体が、とても哀しくなったんです。
まとめ
さて、長文になりました。
ここまで辛抱強くお読みいただき、ありがとうございました。
はっきりいって、白井聡氏に限らず、他者を批判することは僕にとってあまりメリットはありません。
サイトへのアクセスのために、他者を攻撃することは、「自分の借金を面白おかしく記事にする」というブログコンセプトに反します。(一応ですが、記事の冒頭や見出しに白井聡氏の名前を入れないように配慮したつもりです)
でも、最後に一つだけ言いたいのです。
どんなに有名人だろうが、政治家だろうが、一般人だろうが、新型コロナウイルスに感染してPCR検査で陽性になった方への風評被害が無くなることを本当に祈っています。
確かに、こんな時期にヨーロッパ旅行やライブに行ったり、家族以外の人と会食に行くのは軽率かも知れません。
それでも、重症の方はもちろん、軽症だったとしても、PCR検査陽性の方への必要以上の攻撃がなくなりますように。このままでは、陽性の方が風評被害を苦にして自殺に追い込まれたり、勤め先を退職せざるを得ない状況になります。
感染経路やクラスターの特定は必要かも知れません。ただ願わくば、「なぜ●●したんだ!」「あの家には近づきたくない」「自宅静養が解けても近づきたくない、触れられたくない」などという自体にならない優しい世界でありますように。