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なぜ新型コロナウイルスは空気感染するという誤った記事が出たか

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僕が新型コロナウイルスに関する風評被害やデマについて記事を書いた次の日の朝、事実に反する記事がJBpressからYahoo!の国際のニュースに流れていたのを発見してしまいました。

記事タイトル:「ついに証明された、新型コロナは空気感染する」

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ちなみにこの記事、JBpressでは現在削除されています。

それでも、僕がYahoo!ニュースを読んだ段階(10:50頃)で、2,087名の方がコメントしていました。

ヤフコメの中には「事実と違う」と冷静なコメントされている方もいらっしゃいました。

けれど、僕の知り合いが「新型コロナは空気感染もある」と、それこそ好意で本記事のリンクを、僕を含めて40人近くいるLINEグループで拡散していました。

「正しいかどうかは科学的な根拠(エビデンス)が必要」って、よく言われるけど、フェイクニュースに踊らされないようにするためには、どうしたらいいんでしょうか。

「ついに証明された、新型コロナは空気感染する」の全文

まずは、JBpressで投稿された「ついに証明された、新型コロナは空気感染する」の全文を引用します。JBpressでは削除されましたが、ドコモのdmenuニュースに残っていましたので、そちらをそのまま記載します。

ついに証明された、新型コロナは空気感染する

世界で最も権威ある医学誌の一つに掲載された衝撃のリポート

JBpress2020年03月14日07時00分

 3月9日、「やはり」と言わざるを得ない内容の論文が米医学雑誌に掲載された。

 内容を端的に述べると、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の空気感染はありうる」というものである。

 研究論文を掲載したのは『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』という1812年に創刊された世界で最も権威があると言われる医学誌である。

 執筆者は米国立衛生研究所(NIH)やプリンストン大学、米疾病対策予防センター(CDC)などに所属する計13人の研究者で、実際にコロナウイルスを使用して実験を繰り返し、空気感染によって感染は起こりうるとの結論を出している。

 同誌に論文が載ること自体、信憑性の高さを示しているが、執筆者は他の研究者によるさらなる検証を促すなど、医学者らしい慎重な姿勢を示している。

 これまでコロナウイルスの感染経路は主に接触感染と飛沫感染の2つが挙げられており、空気感染は考えにくいとされてきた。

 厚生労働省のホームページでも、「国内の感染状況を見ても、空気感染は起きていないと考えられる」と記されている。

 ただ、閉鎖空間や近距離といった環境下であれば、「感染を拡大させるリスクがある」としてきた。

 これは厚労省がまだコロナウイルスを使った感染実験による確かなデータを得てないということでもあろう。

 空気感染は起きないというのが政府の見解である以上、多くの国民は「空気感染はない」と判断してきたと思われる。

 ただ同時に「空気感染もありうる」との思いを、多くの方は心の片隅に抱いてきたかと思う。そのためのマスク着用だったはずだ。

 今回の論文によって今後、コロナウイルスへの対策が少し変わる可能性がある。

 論文の概要(要旨)の重要部分を翻訳したい。

「生きたコロナウイルスエアロゾル化後、3時間まで生存することを突きとめた。銅(製物質)の表面では4時間、段ボール上では24時間、プラスチックやステンレス・スチールの上では2、3日の間、同ウイルスは生存していた」

「(中略)我々の研究結果によって、コロナウイルスエアロゾルと媒介物によって感染しうるということが判明した」

 研究論文らしい言葉と表現なので分かりづらいが、主旨は「空気感染はありうる」ということである。

 同時に、様々な物質の表面でコロナウイルスは生き続けることも明らかになった。

 論文中にエアロゾルという言葉が出てくる。感染の話をする時などに広義として「空気感染」と解釈されるが、正確には気体に浮遊する液体や固体の粒子を指す。

 コロナウイルスは基本的には体液の中で生きるが、咳やくしゃみなどによってウイルスが空気中に拡散され、地面に落ちないで空気中に浮遊し続けながら生きることが、今回の実験で分かったのだ。

 これが「エアロゾル化後、3時間まで生存する」の意味である。

 しかし、空気感染の可能性が示されても、感染力がどれほど強いかは今回の論文では学究的に示されていない。

 空気感染については2月8日、中国上海市政府が開いた予防と管理に関する記者会見で上海市民政局副局長の曽群氏が、コロナウイルスの感染経路について「主に直接伝播、エアロゾル伝播、接触伝播によって感染している」と述べた経緯がある。

 しかし翌日、中国のWHO(世界保健機関)戦略諮問グループ(SAGE)の感染症専門のメンバーが、「新型ウイルスがエアロゾルによって感染する証拠はない」と否定。

 空気感染の可能性は極めて低くなり、日本でも空気感染はしないとの見方が広がった。さらに前出の曽群氏が医師でなかった点も空気感染の信憑性を低いものにした。

 だが『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』の論文により、コロナウイルスが空気感染することがほぼ示された。論文ではこうも記されている。

「空気中と物質上でのウイルスは安定しており、ウイルスの感染が直接起こりうる。またウイルス保菌者から他者に感染してからもウイルス粒子は生き続ける」

 これまでも接触感染と飛沫感染以外に、空気の流れが淀みがちな閉鎖性の高い空間での空気感染が指摘されてきた。

 ただ今回、医学者による学究的な実験によってコロナウイルスの空気感染が証明されたことになる。

 もっとも、コロナウイルスの感染性はここまでの状況から判断する限り、麻疹のように免疫のない人が同じ部屋にいたらほとんど感染してしまうほど強くはないと思われる。

 ウイルスにはエイズウイルスのように、致死性は高いものの飛沫感染も空気感染もしないタイプもある一方、麻疹のウイルスのように致死性は低いが、感染力が非常に強いタイプもある。

 コロナウイルスは麻疹ほどの感染力は確認されていないが、新型ウイルスであるためワクチンの開発には時間がかかるばかりか、特効薬といえる薬剤はまだない。

 筆者は米首都ワシントンに居住していた時、エイズウイルスの治療薬を開発した医学者についての書籍を執筆した。

 約12年を費やして取材・調査する過程で、ウイルス学や免疫学を紐解いた。

 日本のメディアでは同論文の内容がまだ広く報道されていないが、「コロナは空気感染する」ということだけが大々的に報じられないことを祈りたい。

 中国では収束に向かいつつあるし、日本でも公共交通機関や公共施設で感染が爆発的に広がっているわけではないので、冷静に対応していただきたいと思う。

(堀田 佳男)

出典:「ついに証明された、新型コロナは空気感染する」 dmenuニュース

僕が感じた、この記事の問題点は3つあります。

  1. 出典が明らかにされていないこと

  2. 文章自体が論理的でないこと

  3. 感染経路を勘違いしていること

それぞれご説明しますね。

1.出典が明らかにされていない

この記事の最大の問題点は、出典が明らかにされていない点だ。

すでに正式に発表されている論文であれば、ネット上で検索できるようになっており、探せるはずです。その場合、出典のURLくらいは載せておいた方が良かったのではと思います。

ちなみに、さきほど掲載した記事の冒頭に

 3月9日、「やはり」と言わざるを得ない内容の論文が米医学雑誌に掲載された。

 内容を端的に述べると、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の空気感染はありうる」というものである。

 研究論文を掲載したのは『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』という1812年に創刊された世界で最も権威があると言われる医学誌である。

の記述があります。

これは出典ではないのか?という疑問が出てきますね。

ただ、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの日本語版のWebサイトを確認したところ、そもそも3月9日の発刊の記事はないんですね。

www.nejm.jp

あるのは3月12日か、一つ前は3月5日のものです。

ひょっとしたら掲載された論文の日付が3月9日で、3月12日刊行のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに載っていたのかも知れません。

それなら、その論文自体の題名くらいは載せないと記事を読んだ人が根拠を確認できないことになります。この点は問題ですね。

2.文章自体が論理的でない

次に、記事本文の文章が論理的ではない点です。

記事中で紹介している論文の翻訳では

「(中略)我々の研究結果によって、コロナウイルスエアロゾルと媒介物によって感染しうるということが判明した」

という「感染しうる」といったあやふやな記述がされています。

これに対して、記事ではタイトルに「ついに証明された、新型コロナは空気感染する」と題し、記事本文でも・・・

 ただ今回、医学者による学究的な実験によってコロナウイルスの空気感染が証明されたことになる。

といった、断定的な書き方に変化させています。

これは根拠となる論文を曲解していると言われても仕方ないですよね。

3.感染経路を勘違いしている

最後に、記事の中にある「エアロゾル感染は広義の空気感染である」という点が間違いです。感染経路を勘違いしています。

エアロゾル感染に関する間違いは1ヶ月前くらいにも日本で拡散されていましたね。だから感染のリスクを下げるためにはN95マスクなどの超高性能なマスクが必要だというデマが発生したのです。

そもそも、空気感染する病気は結核・麻疹(はしか)・水痘(みずぼうそう)くらいしかありません。

もし、新型コロナウイルスが空気感染するなら、かなりの大事件となります。

また、空気感染に変異する可能性は、他のウイルスも含めて未来永劫ゼロかと言えば、ゼロではないと言わざるを得ないというのが問題です。(ややこしい日本語だ)

だから、「新型コロナウイルスは空気感染する」という記事は、あり得るかも知れないという意味で業が深いのです。

が、現状の感染力は空気感染する他の病気ほどは強くありません。濃厚接触者の検査でも陰性が多いですし、武漢であれだけ蔓延しているのなら、帰国者はほぼ全員罹っていないとおかしいということになります。

フェイクニュースに踊らされないためには

フェイクニュースに踊らされないようにするためには、ニュースの根拠としている物事(ニュースソース)を自分でしっかりと確認することです。

よく「何を言ったかよりも誰が言ったかが重要」等と言われます。

これは発言者側の立場ではある意味で正しいですが、聞き手側にとっては戒めでもあります。

つまり、発言した「誰」かさんに責任を押しつけて、受け手が情報の精査や考えを放棄しているともいえますよね。これでは発言した「誰」かさんが間違ったことを言った場合、受け手が間違った情報を信じてしまいます。

だから、知らないことを聞いた場合、違うことを言っている人がいないか、情報を比べるっていう作業をしなければなりません。

そして「誰」が言った意見を正しいと思うのかは、自分で決める必要があります。

問題の記事にも擁護される余地はある?

さて、エアロゾル感染は空気感染ではないと考えたとき、ここでふと疑問に思いました。

空気感染の定義って何?

これ、ネットで調べても意外と明確な定義としては出てこないんですよね。。。(^_^;)

で、いろいろ調べてみると、問題の記事も少しだけですが擁護できるところもあるかなって思いました。

Wikipediaの記述

Wikipediaの「感染経路」の項目にあった飛沫核感染(空気感染、塵埃感染)について引用します。

飛沫核感染(空気感染、塵埃感染)

飛沫として空気中に飛散した病原体が、空気中で水分が蒸発して5マイクロメートル以下の軽い微粒子(飛沫核)となってもなお病原性を保つものは、単体で長時間浮遊し、3フィート(91センチメートル)以上の長距離を移動する。呼吸により粒子を吸い込むことにより感染を生じる。埃と一緒に、ウイルスを吸い込む場合でもなる。

飛沫感染と飛沫核感染は病室管理上、区別する必要がある。飛沫核感染する、治療法のない強感染性・強毒性の病原体に感染した患者は、フィルターをもった独立した排気経路のある陰圧室での隔離療養が理想である。

麻疹(はしか)・水痘(水ぼうそう)・天然痘結核が代表的。

コロナウイルスでも可能性が示唆されている[要出典]。

ノロウイルスも後述する経口感染が主体ではあるが、塵埃の浮遊による飛沫核感染も起こり得る。

出典:Wikipedia:「感染経路」より抜粋

もうね、何を信じていいか分かんない(^_^;)

Wikipediaでもコロナウイルスは空気感染の可能性が示唆って書いてある。

コロナウイルスでも可能性が示唆されている[要出典]。

ただ、Wikipediaで[要出典]がついているということは、根拠が示されていないということでもあります。

Wikipedia自体が誰でも修正可能で校閲が入っていないため、100%信じてはダメな事典ではあります。でもまぁ普通は信じちゃうよね。。。

どうしても新型コロナウイルスを空気感染にしたい人がいるんでしょうかねぇ(^_^;)

空気感染とエアロゾル感染の定義

空気感染かどうかは、先ほどのWikipediaの記述や他のネットで調べた感じでほぼ間違いなさそうな定義は、直径5μmより小さい粒子で感染するかどうかでしょうか。

では、問題になっているエアロゾル感染はどうでしょう。

こちらもWikipediaから引用。

エアロゾル感染(限定空間感染)

エアロゾルとは、飛沫よりも小さな粒子のことである[1]。エアロゾルはくしゃみ等によって発生する飛沫とは区別されており、すぐに床面などに飛散することはない[1]。また、水分を含むため飛沫核のように長距離を移動することなく、同じ空気中に一定の時間漂うことが主な特徴とされている[1]。エアロゾル感染は、密閉された空間において長時間・高濃度のエアロゾルにさらされた場合に起きるとされており、限定された条件下で発生しやすいという点で通常の空気感染とは異なる[1]。限定された条件下とは医療機関の診察室、タクシー車内などの密閉された空間を指す。

ただしこの用語は専門的なものではない[2]。

出典:Wikipedia:「感染経路」より抜粋

ふむふむ。

このWikipediaを読む限りでは、エアロゾル感染って「飛沫感染 < エアロゾル感染 < 空気感染」ってコトなんでしょうかねぇ。

ていうか、ここでも問題記述が・・・

ただしこの用語は専門的なものではない[2]。

じゃぁ何用語なんじゃいっ!!

これじゃ、問題の記事を書いた人も間違うってなモンですよ。そして、その記事を見た人が善意で拡散しちゃうわけですよ。

エアロゾルの定義

ちなみに、「エアロゾル」自体について調べてみました。日本エアロゾル学会の「エアロゾルとは」から抜粋して引用します。

気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子をエアロゾル(aerosol)といいます。エアロゾルは,その生成過程の違いから粉じん(dust)とかフューム(fume),ミスト(mist),ばいじん (smokedust) などと呼ばれ,また気象学的には,視程や色の違いなどから,霧(fog),もや(mist),煙霧 (haze),スモッグ(smog)などと呼ばれることもあります。エアロゾル粒子の性状は,粒径や化学組成,形状,光学的・電気的特性など多くの因子によって表され,きわめて複雑です。その上,例えば粒径についていえば,分子やイオンとほぼ等しい0.001μm=1nm程度から花粉のような100μm程度まで約5桁にわたる広い範囲が対象となり,また個数濃度についても,清浄空気の10個/cm3程度から発生源近傍の106~1010個/cm3程度まで 7~8 桁にもわたり,さらに最近の超クリーンルームにおいては10-5個/cm3程度まで要求されるようになっています。このように,エアロゾル粒子は微小・微量である上に,多数の因子によって表され,しかも個々の因子の対象範囲がきわめて広いことから,エアロゾル研究の基本となるエアロゾル粒子の粒径測定一つをとっても,単一の方法はもとより同一の原理に基づく方法により全域を測定することは容易でなく,このような性状特性がエアロゾル研究の難しさの原因となっています。

出典:日本エアロゾル学会:「エアロゾルとは」より抜粋

これをみる限り、エアロゾルは「気体中に浮遊する液体や固体の粒子のこと」のようですね。

でも、大きさに幅がありすぎで「直径0.001μm~100μm程度」とあります。

空気感染となる飛沫核の直径は「5μmより小さい」なので、エアロゾル飛沫感染と空気感染(飛沫核感染)のどちらも当てはまるということです。

そりゃ素人だと間違うよなぁ。。

まとめ

今回は、多くの人が未知のウイルスということで不安を抱えて暮らしている中、タイトルだけでも不安をかき立てるフェイクニュースでした。

意外にも、ヤフコメで冷静な意見が多かったのは、「エアロゾル感染」という言葉自体が一度ワイドショーやネットニュースを賑わしていたからだと思います。

とはいえ、新型コロナウイルスに関しては、今後、新たな事実が発見されるかも知れませんし、ウイルスが変異して性質が変わるかも知れません。良い方に転ぶかも知れませんし、悪化するかも知れません。これはもはや神頼み。良い方に転び、終息に向かうよう願うばかりです。

僕たちができることは、自分の頭で考え、情報を取捨選択して行動することです。

手洗いや咳エチケットなど、今できることを愚直にやっていきましょう。

追伸

読者数が少ないとはいえ、僕も本ブログを使って情報を発信する身です。今回の件を反面教師とし、できるだけ根拠を示しながら発信しなければと襟を正す思いです。

もし、僕の記事が間違っていたならすぐに訂正しますので、コメント等で教えていただけると嬉しいです。